局所的な生産性の向上は会社を潰す
生産性とは
生産性という言葉を聞いたことがあるでしょうか。社会人であればよく耳にすると思います。仕事における生産性=アウトプット/インプットで測ることが多いですが、一般的には
生産性(せいさんせい、Productivity)とは、経済学で生産活動に対する生産要素(労働・資本など)の寄与度、あるいは、資源から付加価値を産み出す際の効率の程度のことを指す。
一定の資源からどれだけ多くの付加価値を産み出せるかという測定法と、一定の付加価値をどれだけ少ない資源で産み出せるかという測定法が在る。(引用:wikipedia)
という定義となっています。
一般的には「資本生産性」「労働生産性」「全要素生産性」の3つに分類されます。
資本生産性:(生産量または付加価値額)/(資本ストック量)
労働生産性:(生産量または付加価値額)/(労働者数または労働者数×時間)
全要素生産性:(生産量または付加価値額)/(労働+資本+原材料などの合計投入量)
色々な業種で使われるのが「労働生産性」で、IT業界でいうとどれだけの量のソフトウェアを時間当たりに設計・製造などの開発出来るかや、製造業だと一番わかりやすく、ある工場でとある製品の製造をどれくらい出来るかを測った指標としていたりします。
たこ焼き屋さんでいうと、1時間あたりに何個のたこ焼きを作れるかなどは測定しやすいですね。
局所的な生産性の向上だけを目指すのは悪手
例えば、ある工場で工業製品の部品を今までは1時間あたりに100個作れるとして、それを組み上げる為のロボットを導入したことにより、2000個作れるとしたら、生産性が向上してハッピーという事が言えるでしょうか?多くの人は、生産性が倍になったんだから当然ハッピーだと答えるかもしれませんが、これは大きな間違いをはらんでいます。
たこ焼き屋さんに置き換えるとわかりやすくなります。
1時間あたりに100個焼けるたこ焼き機から、2000個焼けるたこ焼き機を導入することで、売り上げが20倍になるでしょうか?答えはNoですね。問題点としては、
・1時間に2000個の需要があるか(買いたい人の母数があるか)
・1時間に2000個焼く為の材料が滞りなく用意出来るのか(仕入れ)
・1時間に2000個を焼く為の下ごしらえが滞りなく準備出来るのか(仕込みの人的手間)
・1時間に2000個を焼くことが出来るのか(たこ焼き機)※今回ロボットを入れたのはコレ
をすべてクリアしないと、この生産性向上は成り立ちません。
しかも、上記の要素は状況によって変動する(揺らぎ)為、このバランスが非常に難しいと言えます。
揺らぎは非常に少ないとして、例えば
需要:1900個/h
仕入れ:1500個分/h
仕込み:500個分/h
焼き:2000個分/h
という状態だとすると、このお店のスループットは500個/hということになります。そうすると、仕入れは2000個分なので1000個分の余剰在庫も抱えることになり、資本生産性も下がることになりますね。つまりお店全体のスループットを上げないと、真の生産性向上とは言えないという事がわかりました。
なお、この一番生産性の低い部分(今回で言うと仕込み部分)をボトルネックと呼びます。
ボトルネックは移動する
では、この仕込み部分を天才シコマーを雇って2000個分/h準備出来るようになったとすると、今度はどうなるでしょうか。
需要:1900個/h
仕入れ:1500個分/h
仕込み:2000個分/h
焼き:2000個分/h
この状態のお店のスループットは1500個/hとなります。今回は最初から変動する数値をすべて記載しておいたのでわかりやすかったですが、本来は最初に見つけたボトルネックを解消すると、次のボトルネックが別の場所で見つかってそれを発見する為に原因調査するという流れになります。そしてこの仕入れの1500個を2000個にする為の対策を打ったら次にどこがボトルネックになるかはもうわかりますよね?
このように、ボトルネックは移動することを覚えておきましょう。
TOC制約理論
今回紹介したのは、全体最適のマネジメント理論、TOC(Theory of Constrains)制約理論と言います。ボトルネックに集中して対策を打つと、全体最適につながるということですね。
何よりまず、このボトルネックを正確に捉える為に、繋がりのある各作業などにどういった制約が存在するのかを測定できるようにならないといけないね。
おっしゃる通りですね。生産する能力じゃなく、最終的に販売してお金になる部分の割合からスループットを測る必要がありそうです。
ちなみにめっちゃ売れているたこ焼き屋でも1日に200パック(1600個/日)くらいの売れ行きらしいから、さっき導入したたこ焼き機は1日に24000個を焼く計算で、「過剰投資も甚だしい」と言えるんだ。
いや、自分で書いたんですよね。
まったく、具体例を挙げるにも現実味帯びた数字じゃないと読者を混乱させると思うよ。
どの口が言ってるんだか…。
生産性向上は全体を指揮している人が抑えよう
ボトムアップで日々の業務をカイゼンすることは当然良いことですが、やり方によっては先ほどの例のように、余剰在庫を作ってしまったり、無駄にリソースを配置してしまう事にもつながります。全体のスループットを把握し、どの部分を改善しているかを見える化するのもカイゼンと同じくらい重要な管理だということを理解しておきましょう。
コメント